マレーシアで就労するに当たって、個人所得税のルールおよび納税手続きの方法について最小限の知識を押さえておきましょう。

個人所得税のルール

居住者とみなされる個人には、特殊な分野の所得を除き累進課税が適用され、最高税率は30%。

住宅家賃補助、各種手当、会社負担の個人所得税等は課税対象所得、住宅付随の家具や自動車などは現物給付所得とみなされます。
一方、本人、扶養家族、保険料などの控除も適用されます。

非居住者の雇用所得は一律30%で課税されますが、雇用による就労が60日以内であれば、所得税法上は免税となります。
その他、日マ租税条約上の条件を満たす場合も免税となります。
雇用所得の種類と評価額は下図の通り。

所得の分類

所得は次のように分類される。
・事業所得
・雇用所得
・配当、利子、償還差益
・賃貸料、使用料、保険料
・上記に該当しない年金など定期的な支給
・上記に該当しない利得

個人所得税の控除項目

個人所得税の申告の際、控除できる項目は以下の通り。詳しくは会計事務所などに問い合わせるのが望ましい。
・教育関連費用
・生命保険料
・両親の医療に関する医療費(要証明書)
・書籍や雑誌などの購入費
・パソコンやスマートフォンなどの購入費
・ジムの会費
・インターネット利用料

個人所得税の申告と査定

自己申告納税制度(Self Assessment System; SAS)が採用されており、納税者が自ら納税額を査定しなければなりません。

納税者は所得税申告書を期限内に内国歳入庁(LHDN、英語でIRB)に提出する必要があります。

内国歳入庁は随時監査を行い、査定が不十分だと判断した場合、課税年度の終了日から5年(移転価格関連の場合は7年)以内に更正を行います。
不正や故意の場合は、上記の時効は適用されません。

個人の確定申告

納税手続きの具体的な方法については「個人所得税の納税にかかる諸手続き」の項目を参照のこと。

課税対象となる所得

個人所得税納税の際で重要なのは「居住者」であるかどうかの判定です。居住者または非居住者で税率が変わります。
居住者とみなされるケースは欄外のとおりです。

マレーシアで就労する人が基本的に「居住者」となりますが、日本法人やマレーシア外にある地域総括会社などに所属する人の取り扱いは、ケースによって異なります。
条件に該当するかどうかをよく確かめてください。

課税対象になる「居住者」の場合は、「課税対象となる所得」について確認した上で、申告書をまとめることになります。

所得税の累進課税税率

マレーシア源泉とされる所得

「マレーシアの源泉所得」とみなされる所得は以下のようなものがあります。ただし税率については「居住者」「非居住者」で異なります。

マレーシア非居住者への税率

非居住者が「マレーシア源泉とされる所得」を得た場合の税率は次の通り。詳しいことは会計事務所などに問い合わせるのが望ましい。
・雇用所得や事業の利得や利益(臨時の収入も含む)→30%

マレーシア居住者と

判定されるケース
・1暦年中に182日以上マレーシアに滞在している場合
・1暦年中の滞在が182日未満だが、その前年または翌年とリンクする場合
・1暦年中に90日以上滞在し、直前の4暦年のうち3暦年に90日以上滞在している場合
・その年の翌年および直前の3暦年に連続して居住者である場合。
*長期の出張や病気治療などで一時不在となった場合でもこの不在日数は滞在日数に含まれる。

【源泉所得とみなされる例】

・マレーシアで就労している限り、雇用者が海外法人であっても、また給与が海外で支給された場合であってもマレーシア源泉所得とみなされる。
・マレーシアでの業務と関連する海外出張にかかる報酬は、マレーシア国内の就労とみなされる。
・マレーシア国外で就労している場合であっても、それがマレーシア国内の業務と関連付けられるものである場合は「国内の就労」とみなされる。
・「マレーシア法人の取締役として受ける報酬」は本人が国内に居住しているか否かを問わず、全てマレーシア源泉所得となる。
・マレーシア企業により運営されている運輸業(船舶、航空など)での就労は全てマレーシア国内での就労とみなされる。

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