アジア版「あなたの街に“住みます”プロジェクト」の芸人全9組13人のうちの1人として、5年前にマレーシアにやってきたKLキンジョー氏。
いまでは在馬日本人社会の間でおなじみの存在に。
2019年には結婚し、さらに新しい家族も増えてすっかりマレーシアに根を張って生活しています。
5年というひとつの区切りの歳月を経て、最近はこれまでとは違った角度でマレーシアを見ることができるようにもなったと語る彼。
その上で新たなマレーシアの可能性も感じているとのこと。詳しい話を聞かせていただきました。

KL住みます芸人 キンジョーさん

1988年生まれ。大阪府出身。三人兄弟の長男。
2015年5月より吉本興業のアジア版「あなたの街に“住みます”プロジェクト」の「住みます芸人」としてマレーシアの首都クアラルンプールに降り立つ。
来馬後は、ショッピングモールなどでマレー語を話すことで、マレー語を獲得。日系企業のイベントやプロモーション、現地テレビの出演などでコメディアンとして活躍。
2019年には結婚。
長男を授かり慣れない育児に奮闘中。

――ひたすら「馴染もう」と努力した日々
キンジョーさん:
今年でマレーシアに来て5年が経ちました。
あっという間でしたね。4年目までは、とにかくマレーシアに馴染もうと必死な日々でした。
友達をたくさんつくりマレー語で会話し、去年は、ラマダンの断食にも挑戦。
良い面もそうでない面も、マレーシアスタイルをフォローすることだけを考えていました。
楽しいことも苦しいこともありましたが、今年、5年目になり結婚したこともひとつのきっかけとなり、自分を客観視できるようになったとき、このままではいけないと思った自分がいました。
端的に言えば「僕の考えるマレーシアらしさ」に甘えている自分がいたんです。

――多様性の中で、フラットな関係を築くトレーニングを
キンジョーさん:
皆さんもよくご存知のように、マレーシアには大きく分けてマレー系、チャイニーズ系、インド系と3つの民族がいます。
それなのに、僕はマレー系だけにフォーカスして、それがマレーシアのすべてだと勘違いしていたような部分がありました。
でも当然のことながらそんなことは無いんです。
チャイニーズ系の方が考える「マレーシアらしさ」とインド系の人が感じる「マレーシアらしさ」は異なります。
だからこの国では「こう言えば伝わる」という正しい答えは無いんですね。

例えば人に何かを依頼するとき、日本の場合は上下関係があることが多く、「これ、やっておいてね」の一言で済むことがあります。
でもマレーシアでは、そうはいかない。なぜこれが必要で、どうしてあなたにやって欲しいと思っているのか、あなたが依頼を受けてくれたら、どんな良いことがあるのか。
そうしたことをすべて、気持ちを込めて伝えなければならない。
それも相手の様子に合わせて。
これは、空気を読むクセのある日本人には、骨の折れる作業であったりもします。

でも実はこれからのグローバル化が進む世界の中では、とても重要なスキルだと思うのです。
日本を一歩飛び出すと、宗教も母国語も異なるバックグランドを持っている人と関わることになります。
その時に、こうしたスキルがあることは、とても有利に働くと思います。

――マレーシアの魅力は
キンジョーさん:
マレーシアの人は、とてもユーモアのある方が多いですね。
いつもニコニコしていて、簡単な会話の中でも、切り替えしがうまい。
どんなバックグランドを持った人でも、共通で楽しいと思える話題を知っているし、どんなトピックだと人が嫌な気持ちになるのかも分かっている。
そのコミュニケーション能力の高さには、コメディアンとしての存在意義が問われる!?と焦ることもあります(笑)。
基本的に多くの方が複数言語を操るし、ローカルの友人と接することで、自然にこちらのコミュニケーション能力もアップする気がします。

それに何より、英語が使えるのは多くの日本人にとって魅力なのではないでしょうか。
マレーシアのアピールポイントには、気候の良さや物価のリーズナブルさが上げられることが多いようですが、僕は英語が通じて、多様な文化を受け入れる包容力があるところだと思います。
ここで鍛えられたら、世界のどこででもうまくやっていけそうな気がしますね。

戻る