マレーシアには「東南アジアにおけるITハブ」とすることを目指し、先進各国からの企業誘致を行う「マルチメディア・スーパーコリドー(MSC)」という政策があります。
目次
国家プロジェクト「MSC計画」とは
これはマレーシアを「東南アジアにおけるITハブ」とすることを目指し、先進各国からの関連企業の誘致を行うというものです。
誘致要件を満たす企業には「MSCステータス」を付与、各種の優遇措置を与えています。所轄機関として、マレーシア・デジタル・エコノミー公社(MDEC)という政府系企業が設けられており、認証から進出後のサポートなどを担っています。

MSCステータス企業への優遇
MSCステータスを得ることで適用される特典(ベネフィット)には別図のようなものがあります。
これはBills of Guarantees(BOG)の名称で約束されています。
主なものとしては、「最長10年間の法人税免除」「外国人の自由雇用」「マルチメディア関連機器の関税免除」「外資規制の免除」などが挙げられます。
Bills of Guaranteesの日本語参考訳
別図にあるMSC Malaysia’s 10 Bills of Guaranteesの日本語訳は以下の通り。
1. 世界的水準の物的インフラ並びに情報インフラの利用
2. マレーシア人ならびに外国人知識労働者の無制限雇用
3. マレーシア資本要件を免除することにより、自由な企業所有形態が取れる
4. 海外からの資本金導入ならびに海外からの借り入れが自由
5. 最長10年の100%法人税免除、または最長5年の投資減税。マルチメディア機器の輸入時の関税免除
6. 知的財産権の保護及びサイバー法による優遇が得られる
7. インターネットコンテンツに対する政府等当局の検閲対象から除外
8. ITインフラは、世界的に競争力のある料金で利用可能
9. 主要企業にはMSCマレーシア関連のインフラ・プロジェクトへの入札権が付与
10. MDECによるワンストップ・エージェンシーサポートが得られる
MSC企業オフィスがある場所
MDECがMSC企業の業務運営のために指定している特定のビルが存在する。これらは、ほとんどの主要地域にある。新しい対象ビルも次々とオープンしている。
ティア1はMSC指定ビルディングに入居することが条件。ティア2はMSCサイバーシティ/センターエリア内の商用ビル。ティア3はオフィスの指定条件は免除されている。
MSCステータス付与の現状
MSCステータスは、2018年5月の総選挙による政権交代を経て、取得条件見直しを行なったことから、2018年7月以降、一時的に申請・審査が止められていましたが、2019年4月2日に再開されました。
再開後のMSCステータスの新たな概要は次のとおりとなっています。
b)充足する条件のレベルに応じて3つのティアを設け、ティア1とティア2では対象所得の100%、ティア3では対象所得の70%が免税となる。
c)無形資産から得る所得は免税の対象外とされる。
d)免税期間は5年間で、さらに5年間の延長申請が可能(したがって、最大10年の100%法人税免除恩恵が得られる)。
e)主な条件として、ティア1およびティア2では、月給5,000リンギ以上の従業員を50名以上または月給1万リンギ以上の従業員を30名以上雇用するとともに、年間の事業経費が350万リンギ以上であることが求められる。ティア3では、月給5,000リンギ以上の従業員を30名以上または月給8,000リンギ以上の従業員を20名以上雇用するとともに、年間の事業経費が100万リンギ以上であること。
MSCの名称の由来
MSCのCは「コリドー」の略で、文字通り帯状の地域のことを指す。MSCという言葉は「政府によって指定された情報と知識の開発を促進するための地域のこと」を指す。
MSCの指定範囲(区域)は、おおよそ首都、クアラルンプールのペトロナス・ツイン・タワーからクアラルンプール国際空港にかけての15×50キロの範囲で、プトラジャヤおよびサイバージャヤなどの新興都市も含まれる。MSCに指定された地域はMDECが開発を担当する。
MSC企業によるビザ申請
MSCステータス取得が承認された後、MDEC e-Xpats Centreに出向いてオリエンテーションを受ければ、就労ビザを申請することができるMSCステータス専用のWebサイトを利用できるようになります。
MDEC e-Xpats Centre
このセンターはMSCステータス取得企業専用のビザ申請窓口のため、混雑なく就労ビザを申請することができる。